大阪府箕面市桜井 山本動物病院 日本獣医がん学会腫瘍科認定医

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猫の乳腺腫瘍

猫には乳腺が通常左右4対あります。乳腺にはリンパ管や血管が入り込んでおり、頭側の2つの乳腺は腋窩リンパ節から胸骨リンパ節に流入しています。尾側の2つの乳腺は鼠径リンパ節に流入しています。この乳腺にできる腫瘍は、犬ほど頻繁に見られるものではありませんが、犬と同様、cat乳頭の周囲に固めのしこりが触れるのが特徴です。 症例によっては、腫瘍が自壊し、乳頭が発赤、腫脹し、褐色や黄色の滲出液が見られることも多々あります。またリンパ節をはじめ、肺、肝臓、腎臓などに転移します。

発 生 率・・・メスの全腫瘍中 17 %
組織所見・・・ 80 % 以上が悪性

原因は?

猫も犬ほどではないにせよ、エストロゲンやプロゲステロン等、女性ホルモンと多少なりとも関係していると言われています。実際、未避妊の猫の腫瘍発生率は、早期に避妊手術を行った猫の7倍にもなります。

対策は?

乳腺腫瘍の80%以上は悪性であるため、始めより乳癌として治療を進めていくことがほとんどです。ただし、乳腺腫瘍以外の悪性腫瘍を除外するために細胞診が必要となります。
そして、比較的に保存的な外科切除が適応されることもある犬と異なり、大部分の猫では片側または両側の乳房全摘出手術が必要です。 遠隔転移のないステージⅡ~Ⅲの手術群 VS 非手術群

手術群の方が生存期間が長いことが示されています。

延命効果と治癒の見込み(特にステージⅠ、乳腺腫瘍の大きさが1cm未満)から、遠隔転移のない全ての例で手術を勧めています。

猫では、片側ないし両側乳腺全切除の方が、
部分切除よりも切除後の再発率が低いことが報告されています。

当院では猫の乳腺腫瘍に対して片側乳腺全切除を行っています。入院は約3~4日となります。cat

外科療法

外科療法は単独もしくは化学療法と併用されます。猫の乳腺腫瘍は侵襲的な挙動を示し、また早期に転移するため、外科療法単独では再発、転移が頻繁に認められます。保存的な手術(腫瘍部分のみの切除)に比べて、片側乳腺摘出術(罹患した片側の4つの乳腺を全て切除する)は局所再発の可能性を低くするため第一選択とされています。 腫瘍が両側にある場合は段階的に間隔をおいて両側乳房全摘出術が行われます。同時に腋窩リンパ節や鼠径リンパ節も同時に切除します。リンパ節切除により、正確な病期判定および転移巣切除による予後改善の可能性があげられます。

臨床ステージ分類と予後判定

臨床ステージは1)原発腫瘍の評価、2)領域リンパ節の評価、
3)遠隔転移部位の確認の3つによって決定されます。

臨床ステージ 生存期間中央値
ステージⅠ 29ヶ月
ステージⅡ 12.5ヶ月
ステージⅢ 9ヶ月
ステージⅣ 1ヶ月

化学療法

現在、証拠となるデータの比較がされていませんが、外科手術後に補助的化学療法を行うことにより、予後を改善できる可能性が示唆されています。 ドキソルビシン、ミトキサントロン、カルボプラチンなどの抗がん剤が有用であると期待されています。

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