大阪府箕面市桜井 山本動物病院 日本獣医がん学会腫瘍科認定医

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悪性リンパ腫についての一般的な知識

1)悪性リンパ腫とは?

悪性リンパ腫は、リンパ系の組織から発生する腫瘍(いわゆる“がん”)です。リンパ系組織とは、免疫システムを構成するもので、リンパ節、胸腺(きょうせん)、脾臓(ひぞう)、扁桃腺(へんとうせん)等の組織・臓器と、リンパ節をつなぐリンパ管、そしてその中を流れるリンパ液からなります。リンパ系組織を構成する主な細胞は、リンパ球と呼ばれる白血球です。リンパ液の中には液体成分とリンパ球が流れていて、やがて血液と合流します。リンパ系組織は全身に分布しているた
め、悪性リンパ腫は全身で発生する可能性があります。

2)悪性リンパ腫の症状

多中心型では全身のリンパ節が腫れ、しだいに元気が消失し、食欲不振になり無治療だと4~6週で死に至ります。消化器型は胃腸や肝臓など内臓器にがん細胞が広がり、食欲不振、体重減少、嘔吐、下痢などが見られることがあります。

3)悪性リンパ腫の診断

悪性リンパ腫の診断に用いられる検査には、以下のようなものがあります。

(1)リンパ節生検

大きくなっているリンパ節のすべて、あるいは一部を、いろいろな検査に用いるために採取します。採取された組織は、病理医が顕微鏡で腫瘍の顔つきを調べて、病理学的分類を行うのに用いられます。また組織の一部は、診断に重要な免疫化学染色や遺伝子検査にも使われることがあります。遺伝子検査といっても、親から子へ遺伝する病気の有無について調べるものではなく、がん細胞のタイプを調べるものです。診断ばかりでなく、治療の手がかりとしても非常に重要です。これらの検査によって、リンパ腫の病型(タイプ)が決定されます。

(2)病気の広がりをみる検査

悪性リンパ腫に対する最適な治療を選択するために、病気が体のどこに、どれくらい広がっているかを知ることが大変重要です。病気の状態が進んでいるかどうか
は、予後に大きく影響します。このため、以下のような検査が重要になります。

・胸部X線検査
・血液生化学検査
・超音波エコー検査
・骨髄検査:穿刺(せんし)吸引検査、生検
・腰椎穿刺(ようついせんし):脊柱管(せきちゅうかん)の中にある液体(脳脊 髄液)を採取 する検査(中枢神経浸潤(しんじゅん)が疑われるとき、あるい は中枢神経への広がりが起き やすいタイプの病気のときに行われることがあり ます。)
・消化管検査:胃内視鏡、大腸内視鏡等

(3)病気の広がりや勢い、治療効果を反映する検査 以下の血液検査をチェック    することが重要です。

・乳酸脱水素酵素(LDH)
・C反応性蛋白(CRP)
・チミジンキナーゼ活性

悪性リンパ腫の標準治療

1)治療の選択肢

 悪性リンパ腫の治療法には次のようなものがあります。
・放射線療法
・化学療法(抗がん剤)
・経過観察(Watchful Waiting、注意深い観察)

(1)放射線療法

 放射線療法は、高エネルギーのX線を病気のある部位に照射して、腫瘍に対する殺細胞効果を期待する治療です。照射した部位に対してのみ効果が期待できます。主に、鼻腔内など局所で発生したリンパ腫に対して行われます。

(2)化学療法

 抗がん剤を経口(内服薬)、あるいは静脈内投与することによって、腫瘍の殺細胞効果・増殖抑制効果を期待する治療です。腫瘍があることがわかっている場所に効果があるばかりでなく、診察や画像診断ではわからない微小な病変部位に対しても効果が期待できます。低分化型リンパ腫ではUW-25やUW-19などの抗がん剤プロトコールが、そして高分化型リンパ腫ではクロラムブシルなどがよく使われます。

(3)経過観察(Watchful Waiting、注意深い観察)

 ゆっくり進行型のリンパ腫(高分化型リンパ腫)の場合、全く無症状で何年も経過することがあります。化学療法を行うメリットがないと判断される場合には定期的に診察を続け、何か症状が出たときにはじめて治療を行うという選択です。物足りなく感じる患者さんもいるかもしれませんが、ヒポクラテスの格言、“First, do not harm!(まず第一に害を与えないこと)”の実践ともいえます。

 治療は、まず完全寛解という状態を目指します。完全寛解とは、治療前に腫
(は)れていたリンパ節や、レントゲンやエコーなどで指摘されていた病変が小さくなって消失するか、あるいは正常の大きさになり、発病前と同じ状態になることを指します。完全寛解が得られた後に予定どおりの治療を行って、治療終了後、定期的に経過をみていきます。

再発・治療抵抗性悪性リンパ腫の治療

 一般的に治療抵抗性とは、一度も寛解を得られない状態を指します。再発とは、いったん縮小したリンパ節が再び大きくなってきた状態をいいます。いったん良くなった悪性リンパ腫が再発したときの心痛は、非常に大きいものです。しかしながら再発の場合、一度は寛解を得られたわけですから、再寛解を目指してレスキュー療法を行います。

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