大阪府箕面市桜井 山本動物病院 日本獣医がん学会腫瘍科認定医

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がんを患う動物の疼痛管理について ~痛みのないくらしのために~

がんは動物にとってどれほど痛いのか?

全ての種類の腫瘍が痛いわけではありませんが、少なく見積もっても犬、猫の腫瘍の30%以上にはかなりの疼痛があると考えられています。人においては進行がんや末期がんの患者の90%までが疼痛を感じています。ただし末期の状態だけに疼痛が出現するものではないので、診断時から疼痛の管理が必要のこともあります。
部位としては、特に口腔内、骨、泌尿生殖器、眼、鼻、神経系、消化管、そして皮膚の腫瘍に最も多く疼痛が認められます。
加えて、疼痛は腫瘍自体によって生じるだけでなく、化学療法や放射線療法、外科療法によって全身衰弱に関係して、がんに関係なく慢性痛や変形性脊椎症などでも生じます。
疼痛は患者にストレスを与えます。持続するストレスは治癒率を低下させるだけでなく、呼吸や循環器、消化器機能に悪影響を及ぼします。そのため、疼痛を軽減することが犬や猫の生活の質を向上させるために重要となります。

がん性疼痛のサイン

犬も猫も本能的に病気や疼痛を隠そうとするため、飼い主にとっても分かり辛いものです。がんを患っている犬や猫の疼痛を評価するには挙動の変化に注意することが重要になります。 そのため、活動性や食欲、グルーミングや排泄など様々なことに対する注意が必要になります。 次頁に行動の変化の例を一部挙げます。
活動性:普段より動きたがらない。特殊な行動の変化(ジャンプ、遊ぶ、外出、
    散歩等の減少)グルーミングの減少
食欲 :慢性疼痛によりしばしば減少
態度 :攻撃性、鈍さ、驚きやすさ、依存性の高まり、寄り添ってくる等
表情 :猫では頭を低くして横目で見る。犬では悲しい表情で頭を下げる
呼吸 :激しい疼痛により早くなる 排泄 :猫ではトイレを使用しなくなる。
    犬では不適切な場所での排泄。
                                   等々 painful

おわりに

 がん疼痛の治療は、動物の病態を悪化させることなく、痛みを最大限に取り除
き、しかも副作用を最小限にすることです。痛みは治療すべき症状であり、治療しうる症状です。痛みが除去されると、たとえ末期であっても表情は明るくなり、穏やかな生活が送れることになります。
 ヒトの研究ですが、マサチューセッツ総合病院、およびハーバード大学医学部の進行性肺癌患者に対する研究で、早期緩和ケアを行なったほうが生存期間延長、およびQOL(生活の質)の改善が見られたと報告があります。治療困難とされる病気を有する患者にとっては注目に値する結果です。動物たちにも同じことがいえるのではないでしょうか。
 家族の一員である動物たちが、穏やかな最後を迎えるために、適切ながん性疼痛の管理が必要であると考えています。
その他気になる点、お聞きになりたいことがございましたら、お気軽に獣医師にお尋ね下さい。

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